大阪地方裁判所 昭和56年(行ク)4号 決定 1981年3月04日
申立人
大阪入国管理事務所主任審査官
指定代理人
小林敬
被申立人
金満
訴訟代理人
渡辺哲司
田崎信幸
主文
当裁判所が昭和五二年五月一九日右当事者間の当庁昭和五二年(行ク)第一〇号行政処分執行停止申立事件についてした執行停止決定を取り消す。
申立費用は被申立人の負担とする。
理由
<前略>
第二当裁判所の判断
一当裁判所が、昭和五二年五月一九日、右当事者間の当庁昭和五二年(行ク)第一〇号行政処分執行停止申立事件において、「被申立人(本件申立人)が申立人(本件被申立人)に対して発付した昭和五二年三月二三日付退去強制令書に基づく執行は、その送還の部分に限り、本案(当庁昭和五二年(行ウ)第三三号)判決が確定するまで、これを停止する。」との決定(以下、本件決定という)をしたこと、右本案訴訟につき、昭和五六年一月一六日本件被申立人の請求を棄却する判決言渡しがなされたこと、以上のことは、当裁判所に顕著である。
二ところで、申立人は、右判決の言渡しにより行訴法二六条一項所定の「事情の変更」が生じたから、本件決定が取り消されるべきであると主張するので、判断する。
行政処分の執行停止は、本案について理由がないとみえるときにはすることができない(行訴法二五条三項)のであるから、一旦、執行停止決定がなされても、本案訴訟において請求棄却の判決があつたときには、それが取り消されるおそれがないと判断された場合には、右判決の確定をまつまでもなく、「事情の変更」が生じたものとして、裁判所の自由裁量によつて、さきにした執行停止決定を取り消すことができると解するのが相当である。
三そこで、この視点に立つて本件を検討する。
一件記録によると、被申立人は、本案訴訟において、昭和二七年法律第一二六号該当者である被申立人には、出入国管理令の適用が排除されるから、被申立人が同令二四条四号リに該当するとした法務大臣の裁決及び申立人の被申立人に対する退去強制令書発付処分は違法であり、また、法務大臣が被申立人に在留特別許可を与えなかつたことにつき裁量権の免脱ないし濫用の違法があり、これをうけてなされた申立人の被申立人に対する退去強制令書発付処分も違法であるから取り消されるべきである旨主張していたものであるが、第一審では、四年にわたる審理の結果、右請求が認容されなかつたものであり、その主張内容や立証の経過等からみて、上訴審において一審判決が取り消されるおそれのないことが明らかである。
判旨そうすると、本件決定は、本案訴訟の請求棄却の判決言渡しにより、「事情の変更」が生じたものというべきであるから、その取消しを免れない。
四むすび
本件決定は事情の変更が生じたことにより取り消すこととし、行訴法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり決定する。
(古崎慶長 寺田逸郎 浅香紀久雄)